8/31「新美南吉の思想をめぐって」ご報告


8月31日に「生誕100年 新美南吉の思想をめぐって―民話・童話・寓話」を開催しました。
前半は『ごん狐はなぜ撃ち殺されたのかー新見南吉の小さな世界』(晶文社)を
このほど書き下ろされた作家・編集者、畑中章宏さんの講演。

そして後半は宗教学者・江川純一さんとの対談でした。
狐を主役とした代表作、「ごん狐」や「手袋を買いに」。
そして「鳥右ヱ門諸国をめぐる」など、あまり知られてはいないが
人間の欲や業を描いた寓話の数々。
新美南吉の作品は、自然と人間の関係、その橋渡し=媒介物としての動物、
(人や共同体に何かを)与えること与えられること、犠牲‥といったテーマについて、
大人にこそ読まれるべき普遍性と洞察にあふれていること。
宮澤賢治と比較すると、より日常的で、出身地の愛知県半田市近辺の風土や文化に根ざした
描写が多く、民俗学的視点から読む面白さがあること。
民俗学はかつてナショナリズムや国と直結してしまったが、
楽家バルトークが田舎を回って民謡を片っ端から録音し、民謡の構造やその「精神」を
追求したように、地域と結びつき、その地の精神を明らかにしようとすることが
とても大切なのではないかということ。
示唆に富んだお話を展開していただきました。


ごんは自ら犠牲になったのでしょうか?
畑中さんの著書にもその答えは書かれていません。
欲や保身や攻撃性、一方で自己犠牲や無償の愛。
人間とは本当に矛盾した存在ですね。

狐のサイン。かわいい!
畑中さん、江川さん、そして猛暑の中、足をお運びいただいた皆様、
誠にありがとうございました。