橋ものがたり

今日は夕方ヒマしていたので、
お客様のお勧め本、
藤沢周平「橋ものがたり」を開きました。

そら庵そばの万年橋が出てくるとお聞きしていましたが、
お〜、短編集の冒頭「約束」というお話にさっそく出ている!と
わかったので、読み始めると…
幼なじみの若い男女が、5年後に万年橋の上で会おうと
約束する話。果たして二人は再会できるのでしょうか??


5年後のその日のくだりを読んでいると、
お〜、こんな描写がありました。
「幸助は大川と小名木川が作っている河岸の角に建つ、
稲荷社(いなりやしろ)の境内に入った。狭い境内に
梅の老樹と、まだ丈の低い桜の木が二本あった。(中略)
そうして、あと半刻ほど、幸助は女を待つつもりだった。
万年橋は手がとどくところにあって、人の姿はよく見える。
お蝶が現れれば、すぐにわかる、と思った。」


これはまさしく正木稲荷神社!
江戸時代なら、手がとどくように万年橋が見えたでしょう。
藤沢周平さん、昔この辺りを取材なさったんでしょうね。
私は20分で読み終わりました。
すがすがしいエンディングに心洗われました。


井上ひさしさんの解説には
「江戸期の橋は、いまの省線の駅のようなもの。人々は橋を目当てに
集まり、待ち合わせ、そして散らばり去ります。人々の離合集散が
多いということは、それだけ紡ぎ出される「物語」の数も多いわけで」
と書かれていました。
また「梅雨どきの土曜の午後のひとときを過ごすのにはもってこい」
とも。


本はご厚意で店に置かせていただけることになったので
「冬の午後のひととき」にご一読ください!