秋田、阿仁マタギを知る旅へ

秋田への旅、丸2日充実の時間となりました。
3月1日土曜日は現役のマタギの方のトークイベントに参加し、翌日はマタギの里、阿仁へ。東京在住のフットセラピストで阿仁に通い始めて5年になるという友人、
徳久珠央さんの企画でした。

写真はマタギのシカリ(頭領)で81歳の松橋吉太郎さん、9代続くマタギ
鈴木英雄さん、写真家で新人マタギ船橋陽馬さんのご三方です。手前は徳久さん。
熊などの大型獣を捕獲する技術と組織をもち、狩猟を生業としてきたマタギの人々。
お話の重要部分のメモです。

・「授かる」という思想:熊は山の神様からの授かりもの。
授かった熊は余すところなく利用する。(たとえば熊の胆(い)は漢方薬として長い間珍重されていました。ボケ写真ですみませんが、写真は1日に行ってきた秋田県立博物館と、阿仁のマタギ資料館のものです)


・山に入った以上は全員が平等なので、平等に分配するという「マタギ勘定」。
・狩猟がうまくいかなかったときも、キノコを取って帰ればいい。山は宝。
マタギは仲間づくりが一番大事(シカリの吉太郎さん)。


山を知り尽くし、敬意と愛情をもって熊などの野生動物と接するマタギの方々に
深く感動しました。しかしマタギを専業でやっていた人がいた時代はすでに過去で、
阿仁マタギは150人(数十年前?)いたのが現在37人とのこと。失われつつある文化です。
ベテランのマタギさんたちは子供の頃から銃の扱いに慣れていたとのことで、
今の時代にそれは不可能。でもマタギ文化を受け継ぎたいと考えた、
新人マタギ船橋さんのような方もいます。


「マイタケのありかは仲間にも教えねえんだよな」(笑)
「熊とばったり出会ったらにらめっこすればいい。にらみ続けたら、自分より強いと思って引き返すから」(会場一斉にため息)。面白いお話ばかりでした。

マタギの里、阿仁では鈴木英雄さんの案内で少し山歩きする企画があったのですが、
眼鏡をまだ作り替えできず、片目がピンぼけなため残念ながら不参加。
参加された方は貴重な体験をなさっていました。みなさんを待っている間、打当(うっとう)温泉というところで有難くも骨休め。雪が深いのでほとんど出歩きませんでしたが、周囲は鳥や犬の声だけで無音。けものたちが住む山の気配を少し感じることができました。

熊の敷物の写真は温泉施設のもので、マタギ資料館も隣接しています。

トークイベントが開催された男鹿市・大龍寺の同じ会場で、土曜夜は
徳久ウィリアムさん(珠央さんとはご夫婦)とチャーリー高橋さんのユニット
「チャーリー・ウィリアムス」のライブも開催されました。
お客さんはほとんど秋田の方というなか、会場全体が一体感と笑いに包まれる素晴らしいライブに。サンバアレンジの「ドンパン節」、レッド・ツェッペリン風「秋田音頭」に、
みなさん拍手喝采でした!

ちなみに大龍寺は、写真のとおりとても立派で由緒あるお寺でした。

帰りは秋田内陸線の阿仁マタギ駅から。

父方が宮城(古川)の出身、そして夫の父が弘前出身ということで、東北は子供の頃から何度も訪れていましたが、これまでまったく知らなかった東北に触れることができました。
マタギ文化は、縄文時代の狩猟採集や源平の合戦など、さまざまな歴史も関連していて
奥深く、興味は尽きません。
といっても決して特殊な場所の、特殊な文化ではなく、
たとえばマタギ勘定は現代のボランティア的な活動などにも通じる知恵だと思いました。
この機会をつくっていただいた徳久さんや秋田の方に心から感謝です。


補足:秋田県立博物館の人文展示室と菅江真澄資料センター、そして企画展「秋田のくすり今昔物語」を駆け足で見学。企画展には阿仁マタギの方が協力されています。
江戸後期に東北や蝦夷を歩き、秋田に長く住んで多くの記録を残した菅江真澄の資料、
とても充実していました。ゆっくり見たかった!
http://homepage3.nifty.com/akitamus/